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「建築協力金の定めのある建物賃貸借契約」その2

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大気の不安定な空模様で、曇り空から太陽が顔を出したり、突然雨が降ったりでとても蒸し暑い東京です。
今年は台風の当たり年なのか、台風が日本列島に多く上陸しています。台風の発生場所も年々日本に近づいてきているようです。自然災害の多い日本、十分に注意していきたいですね。

さて、前回のブログをご覧戴いた方からお問い合わせを頂きましたので、今回は「建築協力金の定めのある建物賃貸借契約」についてもう少し詳しく書きたいと思います。

「建築協力金」について

建築協力金は建物賃貸借契約において保証金と同様ですが、オーナーの所有している土地に、テナントの要望で希望通りの建物を建設して頂き、テナントから建設工事代金相当額分を「建築協力金」(保証金)として差入れするというスキームです。

建物完成後はテナントが一括借り上げします。

遊休地にどんな建物を建てようかと思案している土地オーナーと、店舗展開を増やして売り上げ目標アップを目論むテナント企業、「建築協力金」を支払って土地を取得しないで自社の計画した店舗が借りられます。

土地オーナーとテナント企業、双方にメリットがあり、リスクヘッジもできて利害関係が一致した契約となります。

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仮に、店舗建設工事代金が5,000万円とすると、テナントから「建築協力金5,000万円」をオーナーへ差入れる内容の『予約契約』を締結します。
オーナーは「建築協力金」でテナントの希望する建物を建設し、5,000万円の建物建設工事代金を支払い自己名義で建物所有権保存登記して『建物賃貸借契約』が成立します。

テナントからオーナーに預託された「建築協力金」は保証金ですから、オーナーには5,000万円の返済義務があり、毎月の賃料から割賦返済するという契約内容です。

例)

  • 建築協力金:5,000万円
  • 賃貸借期間:15年間(180ヶ月)
  • 月額賃料:120万円
  • 建築協力金:割賦返済額5,000万円÷180ヶ月≒27.7万円
  • テナントからオーナーへの毎月支払い賃料
    120万円-27.7万円=92.3万円

と、いう契約内容になります。

オーナーの土地有効活用方法として、テナント側・オーナー側、双方の利害関係が一致していることから「建築協力金の定めのある建物賃貸借契約」が広く普及してきたと言えます。

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「建築協力金」方式の推移発展と動向

建築協力金方式による建物賃貸借契約は主にロードサイドビジネスで大きく発展してきました。

1960~80年代のマイカー、マイホームブーム時代には、住宅開発は都会から郊外へと伸びて行き人口も郊外へと流出していきました。郊外にはショッピング施設も少なく空き地の多いロードサイドには、ショッピングセンター・ファミリーレストラン・ホームセンター・コンビニエンスストア・紳士服専門店等々、様々な業種がこぞって出店しました。

この時期にロードサイドビジネスの出店計画と街道面の空き地オーナーの土地有効活用方法として「建築協力金方式による建物賃貸借」が大きく発展しました。

少子高齢社会に入り、郊外の人口も減少、マイカー時代の終焉により、郊外型のロードサイド店舗より、都会の生活道路沿いの店舗、駅前商店街の店舗へと人口も人気も移り変わってきています。

そのため、「建築協力金方式」による店舗展開も都会へと戻ってきているのが現状です。

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オーナーのメリット

今回のオーナー さんもそうでしたが、土地有効活用方法としては以下のようなメリットがあります。

  • 土地を手放さずに、銀行借入もせずに、小資金で建物が建設できる。
  • 空き地にして高い固定資産税を支払っているより、貸家建付地の評価減の固定資産税ですみ、建物減価償却も計上できて安定収入が得られる。
  • テナントからの要望により店舗を建設するため、 無駄に容積率を吸収した大きな建物を建てなくて済む。
  • 容積率:500%の土地に、1~2階程度の建物
  • 一括借り上げのため空室や管理の心配がない。
  • 「建築協力金」は無利息なので借入資金を使わず建物が建設できる。
  • 銀行借入と違い利息の返済、土地建物への抵当権設定登記が不要です。
  • テナントが中途解約する際には「建築協力金」の返済残額の返還義務が無くなりますから、銀行借入資金で返済債務が残るより有利な契約と言えます。

※ 但し、テナントが放棄した「建築協力金の残額」は一時所得として課税されますので要注意です。

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尚、この「建築協力金の定めのある建物賃貸借書」は、「消費貸借に関する契約書」に該当しますので、金額に応じた収入印紙の貼付が必要になります。
不動産投資も、土地有効活用も、あくまでも自己責任のもと、より安全で確実な方法で行いましょう。

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