秋の長雨、と言いますが今年の秋は本当によく雨が降りますね。
10月も半ばになると、日に日に秋の気配が深まり、季節の移り変わりを肌で感じますね。
先日、弊社クライアント:Yオーナーさんから、管理受託中の一棟アパートの売却相談がありました。かれこれ、30年位前に弊社から、新築アパートをご購入頂き、現在も弊社で管理受託している物件です。
今ではYオーナー様もご高齢になられてご子息様からのご相談でした。その際、話題になったのが「収益還元法による売却価格相場」でした。Yオーナー様に新築アパートをご購入頂いたバブル崩壊後の平均的期待利回りは、表面利回りで8~9%位でした。
現在では当時と比べ家賃も下落しておりますが、景気もよくなり、金利も下がっていて不動産投資家さんの平均的期待利回りも、市場流通物件の表面利回りは~6%位でしょう!!
そう言えば、拙い当ブログではありますが、リーマンショック後の2009年6月2日の記事に例題:『利回り計算と物件選別』がありましたのでリブログします。
不動産投資をご計画中の方は是非ご参考になさってください。
例題:『利回り計算』と物件選別『利回り計算』だけでは成功しない
不動産投資を計画している方々にとって一番関心の高いのが「利回り計算」です。
投下資本に対して収益が多い方がいいことは当然です。
しかし、高利回り物件だけを追及しすぎると思わぬ落とし穴に落ちる可能性もあります。
「利回り計算」を一つのバロメーターにしながら、購入物件を決定する際には様々な角度から分析・検証することをお薦めいたします。一口で「利回り計算」と言っても様々な計算方法があります。毎月の賃貸収入を年間所得として計上し、購入価格等の投資資金で割り算して「利回り計算」します。
年間の収入所得=インカムゲインの数値を求める算出方法ということになります。
売買価格:7,500万円
1K×8室
賃料:65,000円+管理費:2,000円
自己資金:2,000万円
銀行ローン借入:5,500万円
返済期間:15年
借入金利年:2.5%
空室率:10%
年間諸経費(固定資産税・管理委託料・建物修繕費等々):15%
今回は購入時諸費用(登記費用・印紙代・司法書士報酬・仲介手数料・各種清算金等)は含まないで試算しました。
上記条件にてそれぞれの「利回り計算」をしてみましょう。
1.表面利回り
一番簡便でおおまかな計算方法で、単純に投下資金(借入金含む)に対して賃料収入が1年間でどれ位入ってくるかを求める計算方法です。
表面利回り=年間賃料収入÷購入価格
例)
(65,000円+2,000円)×8室×12ヵ月=6,432,000円
購入価格:75,000,000円
=0.08576×100=8.57% の利回り
2.想定表面利回り(予想利回り)
上記一棟売アパートが建築中で入居者募集をしている段階、あるいは空室が何室かあり入居者募集をしていて入居者との間で賃貸借契約書が締結されていない場合の利回り計算方法です。
例)
建築中の場合、あるいは空室が2室の場合、賃料65,000円、管理費2,000円で募集をしても入居者からの賃料値下げ交渉があって5,000円を値引きした場合には表面利回りは下がることとなる。あくまでも募集条件のまま賃貸借契約が締結できたと想定した場合の表面利回り計算方法です。
想定表面利回り(予想利回り)
募集条件で満室になったと想定した年間賃料÷購入
例)
(65,000円+2,000円)×8室×12ヶ月=6,432,000円
購入価格:75,000,000円
=0.08576×100=8.57%の利回り
3.実質利回り
上記一棟売アパートを保有すると仮定した場合の利回り計算方法です。投資用不動産を保有する際、ローン支払前の諸経費、つまりランニングコストを年間賃料収入から差し引き購入価格で割り算した利回り計算方法です。この際、年間賃料収入も空室率を計上しておいた方が安全と言えます。
実質利回り=年間賃料収入-(ランニングコスト+空室率)÷購入価格
例)
年間賃料収入6,432,000円×10%(空室率を10%と仮定)=643,200円
※空室率は物件種類・立地条件・テナント・入居者・建物グレード等々により異なる。
ランニングコスト:建物修繕費・管理会社への管理委託料・固定資産税・火災保険料1ヶ年分等々の年間諸経費を15%計上
6,432,000円×15%=964,800円
実質利回り=6,432,000円-(ランニングコスト+空室率)÷7,500万円
6,432,000円ー(964,800円+643,200円)÷75,000,000円
=0.06432×100=6.43%の利回り
4.借入金返済後利回り
上記一棟売アパートを銀行ローンを利用して購入した場合の利回り計算方法です。
3.実質利回りの年間収入金額から借入金返済年間支払額を差し引き、年間手取り金額を購入価格で割り算した利回り計算方法です。
借入金返済後利回り=年間賃料収入-(ランニングコスト+空室率+年間借入金返済額)÷購入価格
例)
年間賃料収入-(ランニングコスト+空室率+借入金返済年間支払額)÷購入価格
銀行借り入れは元利均等方式で、借入期間中変動しないものとします。
借入金返済後利回り=6,432,000円-(ランニングコスト+空室率+年間借入金返済額)÷7,500万円
6,432,000円-(964,800円+643,200円+4,400,820円)÷75,000,000円
6,432,000-6,008,820÷75,000,000=0.00564
0.00564×100=0.56%の利回り
5.自己資金投資利回り
上記一棟売アパートを購入する際の自己資金に対する利回り計算方法です。年間収入金額から、ランニングコスト・空室率・借入金返済年間支払額を差し引き、年間手取り金額を投下自己資金で割り算した利回り計算方法です。
自己資金投資利回り=年間賃料収入-(ランニングコスト+空室率+借入金返済年間支払額)÷投下自己資金
例)
年間賃料収入-(ランニングコスト+空室率+借入金返済年間支払額)÷投下自己資金
自己資金投資利回り
6,432,000円-(964,800円+643,200円+4,400,820円)÷投下自己資金20,000,000円
6,432,000-6,008,020÷20,000,000=0.021199
0.021199×100=2.12%%の利回り
以上の「利回り計算」方法から、投資物件を購入する際にはあくまでも自分の投資環境をよく把握して、利回り計算だけにとらわれることなく、投資物件の選別をするのが良いでしょう。いくら利回りがよくても資産価値が低かったり、不動産価値が低かったり、安全性が低かったり、流動性が低い物件を購入してしまったら後悔することになります。
投資物件の選別の要素
マーケティング
- エリアマーケティング
- 投資物件のリスク分析
- 立地条件・建物グレード
不動産価値のチェック
- 再建築するときに同規模の建物が建設できるか
- 道路条件・設備関係
- 近隣地価相場のチェック
安全性の検証
- 借入金返済余裕率・資産価値比率
- 損益分岐点
- 賃料相場の検証
流動性
- 換金性
- 物件所在地の将来性
- 建物メンテナンス・管理委託会社
不動産投資を計画中の皆様、購入しようと思う投資物件を買う前に、利回り計算だけではなく上記★投資物件の選別の要素★から、物件探しをするのが成功への早道とも言えます。
なぜなら、景気回復して株価・金利が上昇すれば不動産の価値も上昇します。
つまり、期待利回り%は今現在より下がって取引されるようになるからです。
例)
年収6,432,000円
購入価格:7,500万円
利回り:8.57%
10年後、景気回復により期待利回り6%で取引されるとすると、年収6,432,000円÷6%=107,200,000円で、売却できる可能性あり!!
売却価格107,200,000円-購入価格75,000,000円=32,200,000円
売却益(キャピタルゲイン)3,220万円
利回り計算だけではなく、将来性・換金性の高い物件への投資をお薦め致します。
以上が、2009年6月2日のブログ記事です。
※賃料について、少子高齢化、人口減少の進んで行く将来、2020年以降は数パーセントの賃料下落率を加算すべきです。
不動産投資家の皆さんの一番の思案のしどころ、物件購入時期と、売却のタイミング、不動産投資も株式投資と同じで、安値で購入し高値で売却するのが一番良いですが、好不況の波、金利変動や為替相場の波に加え、不動産投資家さん一人ひとりの人生の波があります。
「思い立ったが吉日」と言う言葉もありますが、自分自身の投資環境の下、自己責任で最適な投資判断をして行きたいですね。